社会運動「論」と社会運動「研究」(1)

 6月8日から15日にかけて、Mobilization Conference (San Diego State University)とAFPP Conference(The University of Manchester)という二つの社会運動研究者が集まる国際会議で報告してきました。もともと双方とも継続的に参加している会議なのですが、久々の対面参加でテンションが上がっているということもあり、双方への参加を通じて考えたことを少しメモに残しておこうと思います。

 Mobilization Conferenceは、社会運動論の国際誌Mobilizationが主催する国際会議です。例年二日間で50名前後の人々が報告するカンファレンスで、セッションの数は12個くらい+キーノートスピーチです。私自身は ”Activist Tourism as a Process of Prefiguration Development: The Case of Tourism at the World Conferences of Women, 1975-1985 ”という、世界女性会議に参加した日本のフェミニストの人々の旅の記録をProtest Tourismという枠組で分析しています(宣伝:論文 “Protest tourism as gendered experience: constraints, feelings and gender roles of female activists“が先日パブリッシュされまして、この報告はその論文の続きです)。

 ちょうどフランスの社会運動研究者Alain Touraineが亡くなったということもあり、Opening Remarksでその話にも言及されるのかと思いましたが特になかったのに少し驚きました。ただレセプションではそういう話もあったのかも(時差ぼけで、会議以外の時間はほぼ寝てしまっていたので出られませんでした)。それだけ完結した世界というか、そもそも同じ畑として捉えていない、自分たちの畑で完結しているという感じなのかもしれません。

 報告は、半分くらいがカリフォルニア大学アーバイン校のPh.D. Programにいる大学院生で、ほかは南米、アジア、北米から来たより年長の研究者という印象でした。欧州からの参加者は前回はもう少しいたような気がするのですが、今年はほとんどいなかったです。研究領域としてはほぼ社会学か政治学で、ここは次回言及するAFPP Conferenceと対照的な点です。

 日本で「社会運動論」というと、社会運動の参加・発生・持続・発展・成功を問うにあたり、資源動員論やフレーム、政治的機会構造といった分析枠組みを用いて特定の事例を量的なり質的に分析するというイメージが大きいかと思うのですが、こちらでもそういった研究が中心です。D.McAdamとかD.Snowといった誰でも知っている研究者の論考が多くの研究報告で引用されていますし、半分以上の研究にフレーム、政治的機会構造、資源動員が出てくるので、日本で教育を受けた人は親しみやすいのではないでしょうか。

 とくに若手の研究はフレームワークがかなりはっきりしており、量的研究の場合「新聞あるいはSNSのデータを集めてテキスト分析orイベント分析、頻出語数orイベント数を規定する説明変数を明らかにする」、質的研究の場合「フィールドワークとインタビューから、連携or動員orメディアカバレッジがうまく行った要因を明らかにする」という内容は特に多かったです。たとえば香港逃亡犯運動を事例とするとしたら、新聞報道やSNSのデータを分析し、どのように香港逃亡犯運動が報道されたのか、あるいはどのように多くの人に広がっていったのかを問う、という感じです。
 この点は後述するAFPP Conference(ないし学術誌Social Movement Studies)とは最も対照的だと思うのですが、問いも対象も方法(研究視角、分析枠組)も「社会運動論」の伝統に沿っていることを求められるという印象です。Mobilizationに掲載された論文を見ると、事例も分析枠組ももっと多様なのですが、研究報告のレベルではかなり「型がきちんと定まっている感じ」を受けました。ただ、この感じはネガティブなものでは決してなく、興味深い事例も多かったですし、詳しく聞いてみるとパーソナルなものも含めた研究動機がとても興味深かったりしましたし、そうしたパーソナルな動機を一つの変数、一つの解析手法に落とし込むというところに、手腕というか工夫の跡が見られて感心することも多々ありました。

 このMobilization ConferenceのMobilizationは社会運動論を代表する国際誌の名前で、私はこちらにはなかなかうまく載らないのですが、「今度こそMobilizationに載せたいな〜」と院生さんに言ったら「でもその載せたいって、その雑誌に載っている論文を面白いと思ってるのとは少し違いますよね」と諌められたことがあったのですが、それをなんとなく思い出していました。「Social Movement StudiesとInterfaceに載せたから、余裕のある時にContention、でMobilization…」と、社会運動論/社会運動研究のなかのスタンプにこだわってしまっているけど、実は相当それぞれの問題意識は異なっており、そもそも対象が同じだけで同じ領域だと捉えていないコミュニティも存在するでしょう。あるいは、もっと広い対象まで「社会運動論/社会運動研究」として捉えているコミュニティだってどこかには存在するでしょう。
 次回では、マンチェスターで開催されたAFPP Conferenceへの参加を通じて、何が社会運動論で何がそうでないのか、また、ここで書かれているような「社会運動論」ではない社会運動研究をどう捉えるのか、について書いてみたいと思います。

※このことを先にFacebookに書いたところ、MobilizationはISA RC48, AFPPはISA RC47に対応するということでしょうか、といったコメントをいただいたのですが、それもちょっと(私自身の受けた感覚としては)違います。Board MemberとかEditorもとくに重複していないはずです。とくにMobilizationはどちらでもなく、むしろASAに相応するのではないかと思っています。ただこのことはかなり限られた人しか関心を持たないと思うので、省略します。

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