Kyoko meets Uma-kun

※このページは「Kyoko meets Uma-kun」の本編です。そもそも、この画像をどうやって撮ったの?ということが気になるあなたは、ぜひメイキング(https://kyokotominaga.com/kyoko-meets-uma-kun-making/)もチェックしてみてください!

 

 

毎年年の瀬に来ては日本人を惑わせるもの、それが「年賀状の通信面」である。ある者は干支にちなんだイラストを、またある者は家族での写真を記載する――しかし、毎年作成するものである故、どうしてもネタ切れの瞬間はやってくる。

日本の某大学院に所属する若手研究者・とみながもそうした「年賀状ネタ切れ」の危機に直面する日本人の一人であった。というのは事実なのだが、ぶっちゃけ今それどころじゃない。年の瀬は研究者にとって締切の季節――どちらかといえばその辺に喘ぎ苦しんでいて、年賀状とかちょっと待って下さい、というのが正直な心境であった。

12月といえば冬も冬、日が暮れるのも早い。部屋の中も暗くなりかける夕方、とみながは一心不乱にPCをカタカタやっていた。

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ある程度手を進め、手を止めてはワードファイルとにらめっこしている。どうやら何かを推敲しているようだ。明かりくらいつけたらどうですか?視力落ちますよ。

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「できた。少しねよう」

寝ずにやってたんでしょうか?お疲れ様です。っていうか、この話ここで終わり?終わりー!?

「…あれ?」

あっ、とみながさん起きました?っていうか、ちゃんと話続くんですね。

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あれ、いない。でもそこで寝てましたよね?

「え?なにこれ?なにこれ本当なにこれ」

どこからかとみながさんらしき声がしますが、ちょっとリバーブかかってます。どこからだろう?

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「え、ちょっと困るよほんとなんなのこれ。冷たいよ。壁が!ガラスで!」
パニックになると語彙が乏しくなるとみながさん。もともと豊富な方とも見受けられませんが…。そんな中、また別のところから声が。
「大丈夫?」
誰がしゃべっているかわかりませんが、とみながさんの周りにあるのは、ブックレスト、本、びん、そして馬のフィギュア。こうなると、まさかとは思いますが、喋っているのは…。

馬のフィギュアがとみながさんのもとにやってきて、もう一度「大丈夫?」と声をかけました。
「うまくん!助けてよ!」
「いいけど」
もうパニック状態なので何が起こってもあんまり驚いてないぞ。そして、うまくんも結構鷹揚な人物(馬物)なようです。

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「よっこらせっと」いきなりグラスに跳びかかるうまくん。これにはさすがのとみながも身構えます。体重をおもいっきりかけて、グラスを横転させる作戦ですね。

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「ありがとう助かった」「でもなんでそんなに出たかったの?」
「いや作業の続きをね…そうなんだよ、作業。作業しないといけないんだよ、締め切り近いから」
「作業?何の?」「いや、それは後で説明するけど。あ、うまくんも手伝ってよ」
とみながさん、小さくなっても図々しい。うまくんを徹底的にこき使う方針ですね、わかります。

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「何すればいいの?」「あのね、学会に参加したいから、そのためにファイルを提出しなきゃいけないんだよね。だから、原稿をメールか何かで提出する必要があるんだよね」「ふーん。大変だね。とりあえず何すりゃいいの?」

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「応募要綱を確認したいから、メールボックスを確認したいんだ」「おっけー」
ThinkPadのキーボードを用いた、ふたりの「ツイスター」ゲームがはじまりました。

「これ結構疲れるな…」今日ほどキーボードがQWERTY配列であることを恨んだ日はないでしょ、とみながさん?

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なんとかメールボックスまでたどり着いたおふたり(人間1, 馬1)。
「わかったぞ。オンラインサブミッションだ」「なにそのスーパーファミコンのゲームみたいなの?」
うまくん、おそらくそれは『フロントミッション』です。

「つまりさ、郵送で送ったり、メールで送ったりするんじゃなくて、学会のページに直接アクセスして原稿をアップロードする形式なんだよね」
「すればいいじゃん?」
「うん、そうだね…」身も蓋もないうまくんのアドバイスに、首肯するほかないとみなが。

「あー、なんか終わったらゲームしたくなってきたな。ゲームしない?」うまくんは結構ゲーマーなのか、こんなことまで打診してきます。無視してSDカードを探すとみなが。
「確かSDカードに原稿入れたんだよな。あれ?SDカードないぞ」

SDカードが机の上にありません。まさか、と床を覗きこむとみなが。

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「えーーーーーー」
「何?あれに入ってるの?」「うん、でもあんなの取りにいけないよ」

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とりあえず作戦会議をするふたり。
「そのまま飛び降りたらまずいよね」「まずいよ。仮に生きてたとしても戻ってこれない」「なんかうまく机から床下までつながってるようなものないかな」
ふたりの目線の先にあるのは…

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【たいした動画じゃないので余裕のある方だけ再生して下さい】

パソコンの電源コード。確かに、あれなら床下までつながっています。
「いやあれはまずいだろ」とみながさん、基本的に運動神経極悪ですからね。
「でも、やってみなきゃわかんなくない?」
うまくんは結構ポジティブなようです。
「実際それしか方法ないしなぁ…」とみながさんも腹を決めました。

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チョコレートの箱についていたリボンを命綱がわりに、コードを伝って机の下へと向かうとみなが。これはなかなかのサバイバルですね。

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「あっ帰ってきた」
「カードもあるよー!」ウキウキ気分で無事戻ってきたとみながの命綱には、SDカードがくくりつけてあります。これで無事、学会に参加登録できますね!

さあ、ふたたびオンラインサブミッションだ!ふたたびログイン画面に向かおうとするとみながとうまくん。

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「ギャー!!!」
いきなり叫びだすとみなが。そりゃあ、いきなり小さくなったら叫びだしたくもなります。自分の置かれた状況の特殊さに今更気づいたか、と思ったら、どうもそこでもないようです。

「どしたのー?」
パニクるとみながさんに比べて、うまくんはいつも冷静。パートナーにするならこんな人がいいのかもしれません。馬だけど。

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「締切の時間過ぎてるううううう」

居眠りした上、小さくなってゴタゴタしてましたからね。思ったより時間が経ってしまったのも無理ない話です。
「終わった…」
「もういっかい要綱見なおしてみれば?念のため」
絶望するとみながに対し、うまくんはあくまで前向きです。パートナーにするならこんな人がいいのかもしれません。フィギュアだけど。

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要綱をみなおすふたり(a.k.a.馬のフィギュアと小さい人間)。モニターが大きいので、お互い首が痛くなりそうですね。
「うーん……」

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「PM5:00だから、やっぱり午後5時までだなあ」
「このETって何?エクストラ・テレストリアル?」
うまくん、今度はメジャー映画ネタで攻めてきました。でもE.T.もゲーム化されてますから、ゲーム経由の知識かもしれません。

「え?ET?どこに書いてるの」
「時間の右~」

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「それだ!」突然何かを思い出すとみなが。
「地球外生命体となんか関係あんのこれ」
「これ日本の学会じゃないから、そもそも締切が日本時間じゃないんだよ。ETってのはイースタンタイムだから、まだ全然間に合うよ」
「やったね!映画見たくなっちゃった。終わったら映画見ようよ」
締切時間がまだ来ていないと知るやいなや、ふたたび作業に取り掛かるふたり。未来の展望がひらけてくると、やりたいことも色々出てきます。今度はとみながも前向き。
「見よう見よう。うまくん映画とかゲームって何好きなの?やっぱダビスタとか?『銀の匙』も映画化されるもんね」

「…なんで馬出てくる映画しか観ないと思われてるのかな…」
偏見に満ちた人物だと思われているとみなが、失望するうまくんを尻目にログインページヘと再び向かいます。

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無事オンラインサブミッションを終えたうまくんととみなが。
「終わった!ちょっと疲れちゃった。少し寝るかな」とみながは、慣れない運動でへとへとです。
それに対して、やはりうまだけあって、体力には余裕のあるうまくん。「えー?映画は?ゲームはー?」

「あとで~」
「仕方ないなあ。おやすみなさい」

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「なんか結構よく寝たなー」

「あ、そうだ。原稿書いたはいいけど、まだ提出してないんだ。出さないと」

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「あれ?もう出してある」

「とりあえずよかった。…ゲームか映画でも見るか」

 

Kyoko meets uma-kun fin.
(ストーリーはここまでです。…でも、とみなが、どうやって小さくなったの?ネタばらし(?)とメイキングは、こちらから!https://kyokotominaga.com/kyoko-meets-uma-kun-making/

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