毎年8月にやってきては日本人児童を困らせるもの、それが「夏休みの自由研究」である。ある者はアサガオの観察を、ある者は手作りのオブジェを先生に提出する――しかし、毎年作成するものであるが故、どうしてもネタ切れの瞬間はやってくる。
富永ももう26歳、夏休みの自由研究から開放され14年と数ヶ月。もうそんなことにわずらわされず、楽しい夏を過ごすはずだった。
時期を同じくして、8月初旬、都内某所。富永に呼び出された友人・O氏は、ある部屋にたどり着く。そこにはダラダラしている富永がいた。
「なんかさ、暇だよね」
「なんで?」
「…どこにも行ってないからだと思うんだよね」
この時期、日本中、いや世界中が学会や会議で大盛り上がりだ。FacebookやTwitterを見ると、誰がどの会議で報告しにどこに行った、という書き込みであふれている。報告でなくても、長期の調査や出張のシーズンである。オンラインを通じて伝わってくる近況の華やかさと裏腹に、富永はただただ鬱屈としていた。
「行かなくても行った気にならないかなぁ…そうだ!」
いまどきこんなベタなひらめき方をする人間がいるか、というくらいベタにひらめいた富永。何やら円を描き、そこに色々書き込んでいるようだ。
「ケーキ作ろうよ。なんか欧米っぽいケーキ作ろうよ」
欧米といっても、国も文化も数多ある。富永の言う「欧米っぽいケーキ」が何を意図しているのかは不明なままだ。
「夏だからすずしそうな柄にしよう」青ペンを取り出す富永。
どうやら富永は、こんな(参考:http://matome.naver.jp/odai/2133320311501384401)ケーキが作ってみたいようだ。
しかしこれはケーキ作り、痛チョコとは違う。しかもいわゆるレシピ集で見たり、ケーキ屋さんで買ったりするようなケーキではない。よくネットで紹介され、アメリカとかイギリスにあるスーパーの店頭で見かけるような「すごいケーキ」なのだ。そんなものが初心者にできるのか?
まずは「プルプルした海」を作ります!ということで、ブルーキュラソーシロップとアガーを選択。アガーは、ゼラチンや寒天よりも透明感がある(http://www.cuoca.com/library/event/special/gelatin/)ということで選んでみました。
お湯を沸騰させ、ブルーキュラソーと水を加え、色と温度を調節します。
さらにアガーを入れて混ぜ、冷やします。
せっかくの海なので、真珠っぽいモチーフとかも入れてみたい。そこで、ブラックタピオカも茹でてみることにしました。
アガー(海)を冷やし、タピオカ(真珠)を茹でている間、氷の部分を作ることにします。