学振の申請書を楽しく書こう(BOOK-OFF WRITES)Vol.2 ~買い出し編~

【前回のあらすじ(第一回はコチラ)】学振(日本学術振興会特別研究員)の申請書を書くコツをつかむため、「資金調達の達人」N先生に会いに行ったKさんととみなが。しかし、N先生はそもそも東京にいなかった。時間つぶしに入ったBOOK-OFFで、ふたりは「所持金1080円で本を買い込み、それを元に学振の申請書を書く」というトレーニングを思いつく…。

ルールは3つ。① 本の中身を見ない、② 合計1080円以内に必ず抑える、③ 今回は新書のみに限る!

大学、ワーキングプア、平和、寺……。いろんなワードが二人を惑わせます。

1時間経過し、ふたりともレジに急ぎました。喫茶店に戻って釣果報告をおこないます。

 まずは、Kさんのチョイス。
『文系大学院生サバイバル』
『世界の大学危機』
『ホームレス博士』
『高学歴ワーキングプア』
『日本の雇用』
『大学教員 採用・人事のカラクリ』

Kさん、選書の理由を教えて下さい!
(※ 写真と説明を対応させていますので、ぜひ写真をクリックして拡大してみて下さい)
Kさん「教育社会学には『教育』と『移行』という分野の研究があって。それって高卒と高卒就職、大卒と大卒就職っていう話になるんだけど…大学院から研究者って話はよくわかってないんだよね。これは最近の情勢、大学の財政が危ないから大学院生の就職が難しいっていう話も結構あるんだけど(先行研究B)、でも就職する人はするししない人はいる。だから大学院生のしたいこと(先行研究A)と大学のニーズがどう乖離してるのか(先行研究C)、っていうことを考えて選びました。」

これには、カメラ担当のA氏も「ええ~すごい。そこまで考えて選ぶんだ」と感心。ちなみに真ん中にあるのはレシートですが、6冊できちんと1080円に収まっています。

お次は、とみながチョイス。
『サバイバル時代の海外旅行術』『仕事で「一皮むける」』『セブン―イレブンおでん部会』『誰も教えてくれない男の礼儀作法』『社会人の生き方』『カルチュラル・スタディーズ入門』『バーのある人生』『ゴルフを知らない日本人』『男と女のワイン術』『小林カツ代と栗原はるみ』

選書の理由はというと…。

とみなが「30代向けの雑誌とかで、服とか車で『いいものに触れると人間性が磨かれる』みたいな言い方されることが多いんだけど、それってなんでかなあと。旅行や嗜好品は余暇活動だと思ってたんだけど、それには正しい遊び方、道とか型みたいなものが確かにあって、型通りすると望ましい。余暇とか趣味に「望ましさ」が織り込まれて、それが成長に繋がるというお話が不思議だなあと思ったので、『遊び・余暇』(先行研究1)と『望ましい生き方』(先行研究2)の関係が知りたいなと思いました。多分文化とか教養の側面と、職業的なキャリアがあると思ったので、そういう理論を扱っていそうな本(先行研究3)」。

A氏「先行研究4は?」
とみなが「日々の過ごし方と理想とする生き方ってジェンダー差があると思ったので、余暇にかかわらずライフスタイルとジェンダーの関係を解く研究(先行研究4)なのがあればいいなと思ったんですが、これはまだうまくつなげるかわかんないですね」

レシートをチェック。確かに10冊で1080円です。

最後に、研究者ではありませんが(したがって書類は書きませんが)、今回、写真撮影を担当してくださっているA氏もやってみることに。
『モンスターペイシェント』
『弁護士』
『反貧困』
『他人と暮らす若者たち』
『マナーとエチケット』

A氏、選書の理由は?
A氏「昔『日本人の法意識』っていう本を読んで、それが面白くて。ただ、少し古い本だから、いま日本人の権利意識がどうなってるかってところが気になって。そこで『モンスターペイシェント』、医療現場で無茶な要求をする人はどういう意思で要求をしてるんだろうと思ったので。で、『弁護士』……法とは違う観点から、クライアントと交渉する側面に権利に対する考え方が現れてるんじゃないかとか。あとは『他人と暮らす若者たち』はシェアハウス、他人とものを共有することでどういうふうに所有権を捉えてるのか見えるかなと思いました。で、最後に『マナーとエチケット』は、法ではないけどここまでは主張していいよねっていう感覚、規範みたいなものが分かればいいかなと。最後に『反貧困』は、よく日本人が生活保護を要求しないっていう、そこにはどういう権利への感覚があるのかみたいなものを知りたくて」

買い出しひとつとっても、3人のチョイスはばらばら。さて、ここからどのような書類を作成するのでしょうか?そしてN先生はまだ出張中なのか……?次回、「製作編」に続きます!(2017年6月9日アップロード予定です)

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