2021年度の仕事と2022年度の研究

休職期間もあり、あまり研究者らしい仕事はできなかった年度でした。論文としては以下のようなものが公刊されました。新しい仕事がうまく既存の研究領域にのせられず、査読論文の刊行ができなかったのが残念です(6月にようやく刊行予定で、ほっとしています)。

富永京子,2022,「方法としての社会運動論――佐藤健二の「社会運動研究における「大衆運動」モデル再検討の射程」から」出口剛司・武田俊輔編『社会の解読力<文化編>』新曜社.
富永京子,2022, 「社会学の社会運動論──隣接領域との関連から」『新社会学研究』5号.

学会報告としても国際会議(AFPP Conference, EAJS Conference)二報、国内学会(日本NPO学会大会、日本社会教育学会、マス・コミュニケーション学会)三報で、まだ論文の査読も通っていないので、暗中模索というか、いまでもやったかやらなかったかよくわからない感じです。法学や観光学、情報技術などの研究会にお呼びいただいたのもありがたい機会でした。

– “Constructing Depoliticized Youth in the late 1970s: The Case of Youth Culture Magazines” (16th International Conference of the European Association for Japanese Studies 24-28 August 2021)
– “What is the Role of Mass Media for Activists? : The Process of Forming the Activist Identity under the Gaze of the Media” (Alternative Futures & Popular Protest, 2021)
– 過去の社会運動に対する否定的評価は政治参加にどう影響するのか (日本NPO学会第23回研究大会, 坂本治也・金澤悠介と共著, 日本NPO学会第23回研究大会 優秀発表賞)
– テレビに映ったのは研究者か、それとも活動家なのか:研究者活動家(Scholar-Activist)の目を通じたマスメディアと社会運動の「分断」 (マス・コミュニケーション学会2021春季大会, 招待)
– 環境危機と社会教育: 小さな社会運動の背景にあるもの (日本社会教育学会2021年6月集会, 招待)

今年度はいくつかの資金調達ができたので、(1) 社会運動をめぐる日常と出来事を空間的視点から (2) 若者文化の 引き続き社会運動従事者の方々へのインタビューと、1970-80年度の若者雑誌データベース構築とそのコーパス分析に力を入れたいと思っています。(2)については、アルバイトの方も募集する予定です。

– 科学研究費(基盤研究(C)),「社会的権利要求への冷笑・揶揄・攻撃をめぐる戦後若者史」
– 大林財団研究助成,「若年自営業者による空き家・空き店舗の活用による都市コミュニティ形成の研究」
– 稲盛財団2022年度稲盛研究助成,「社会的権利要求に対する揶揄・冷笑・攻撃」
– 研友会調査研究助成,「環境配慮的・倫理的意義を持つ移動手段としての鉄道に関する研究」
– 食生活研究会2022年度研究助成,「グローバル化による異文化相互理解の契機としての『食』」
– 窓研究所2022年度研究助成金,「社会運動としての自力建設経験とその専門化・職業化」
ほか

アウトリーチ(というか完全に趣味でしょうか)としては、毎日新聞朝日新聞、北海道新聞での連載と、TBSラジオ「蓮見孝之 まとめて!土曜日」や津田大介さんの「ポリタスTV」に定期的に出演していました。こういう仕事ももう何年目か、5年目かそれくらいになりますが、長期レギュラーや連載もでてきて、新聞の向こうの人、ラジオの向こうの人との安定的な関係性ができているような、それで少しずつ自分の動きも自由になってきている気がします。

昨年は選挙もありましたし、いわゆる「Z世代」と呼ばれる若い人々の社会運動参加も盛んだったので、相変わらず各種講演や対談、インタビューや寄稿も結構やりましたが、いままでの研究についてのヒストリーをまとめていただいたesse-sence/サントリー文化財団のインタビュー、私的な事柄の変化についてまとめていただいたyoi/集英社のインタビューはとりわけ印象的でした。論稿としては「遅いインターネット」や「学士会会報」「Yahoo! 個人(マスメディアは社会運動をどのように報道・描写してきたのか)」への寄稿は結構頑張って書いたものだと思います。対談としては、山本浩貴さんとの対談日本科学未来館で行った瀧本彩加さんとの対談など、他分野の研究者の方との議論が面白い仕事でした。

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