ありがたいことで、富永研究室も例年大学院の進学先として、あるいは博士課程修了以降の研究の場としてご志望いただくことが多くなりまして、出願前に色々とご説明する機会があればと思うのですが、なかなか全ての方にお会いするのは難しいためこの場を借りて説明申し上げます。 研究・教育にあたっての自分の考えの整理も兼ねておりますので、修正・増補を加えるかもしれませんが、一応のところこのような点を心がけております、という参考としていただければ幸いです。 ・「社会問題」と「社会運動」は(少なくとも本研究室においては)異なります 本研究室は、「社会運動」の研究を行います。社会運動って何?というとまた答えが難しくな […]
朝日新聞「モジモジ系時評」終了&朝日新聞デジタル「あちらこちらに社会運動」開始
先日、東京にある自宅の近くで買い物していたら「朝日新聞の富永さんですか?」と聞かれました。私は五年ほど朝日新聞夕刊で連載をしていたのでそのせいかと思われますが、さすが新聞ともなると影響力が違うものですね。 というわけで、2019年から2024年まで続いた連載「富永京子のモジモジ系時評」が終了し、朝日新聞デジタル「あちらこちらに社会運動」を新しく連載することになりました。毎回社会運動に関わる主題を一つ挙げ、その主題にまつわる社会運動関連論文を紹介する「おもし論文編」と、各分野の識者とする「おしゃべり編」から成る連載です。第一回は「移動」です。 「モジモジ系時評」は自分の代表的な連載となり、 […]
「そもそも何も失ってないから、取り戻す必要なんてないんだよ」(2023年度研究・社会的活動まとめ)
新著の出版に向けての作業や新連載の準備などを行っていたら新年度も一ヶ月半をすぎていました。例年研究費の報告書などの関連で研究成果のまとめをやっているので、こちらにも書いておきます。 [刊行論文(査読付)]1) Kyoko Tominaga, 2023, “Protest tourism as gendered experience: constraints, feelings and gender roles of female activists” Frontiers in Sustainable Tourism 2 2) 富永京子,2023,「1970-80年代 […]
『みんなの「わがまま」入門』について:政治的じゃないのに政治的な本
『読むことの歓び 第15回読書感想文コンクール 優秀論文集(明治大学文学部編)という本をお送りいただきました。『みんなの「わがまま」入門』(左右社)が課題書として取り上げられたということで、読書感想文が掲載されています。 『みんなの「わがまま」入門』については、刊行からそろそろ5年くらい経つのですが、徐々にではありますが版を重ねており、現在もご取材やご紹介をいただきます。実はこの本については、100超のメディアでご紹介いただいたにもかかわらず、自分としてはあまり言及したくなかったので積極的にその後の動向を書いてこなかった経緯があります。この春には新しい本も出ますし、もう書いても良いかなと思 […]
社会運動「論」と社会運動「研究」(2)
前回(社会運動「論」と社会運動「研究」(1))のつづきです。 サンディエゴからマンチェスターに移動して、社会運動研究の国際会議AFPP Conferenceでは”Prefiguration performed by ‘pretend’ squatting: The case of the self-build community engaged by activists”という報告をしました。社会運動従事者の自力建設を通じたライフスタイル型の活動を分析した研究プロジェクトの一部です。 先週参加したMobilization Conferenceに比べると、こちらはオフィシャルな […]
社会運動「論」と社会運動「研究」(1)
6月8日から15日にかけて、Mobilization Conference (San Diego State University)とAFPP Conference(The University of Manchester)という二つの社会運動研究者が集まる国際会議で報告してきました。もともと双方とも継続的に参加している会議なのですが、久々の対面参加でテンションが上がっているということもあり、双方への参加を通じて考えたことを少しメモに残しておこうと思います。 Mobilization Conferenceは、社会運動論の国際誌Mobilizationが主催する国際会議です。例年二日間で50 […]
人の手を借りることはこんなにも難しいのかと思う一年(2022年度まとめ)
あっという間の2022年度でした。個人で論文や研究発表を頑張るというよりは、スタッフや院生、研究員の方々との連携を重視した年でした。そもそも社会科学系の、しかも質問紙調査や実験、海外でのフィールドワークなどを行うわけではない質的研究者なのに、なんでそれほどチームでやることを頑張ろうと思ったかというと、自分ですべてやることはもう難しいだろうということと、今後の生活の仕方を考えると「誰かに頼る」ことを前提として生活や仕事を捉え直さなくてはいけないだろうと思ったからです。 そういうわけなので、昨年度はとにかく人に頼った一年で、頼りすぎて人と自分の境目が曖昧になるくらいでした。 なぜ人に頼る必要 […]
インターネット番組「ポリタスTV」の出演休止/降板について
2021年4月から隔週で、津田大介さんが務めるインターネット報道番組「ポリタスTV」に隔週で出演したのですが、8月をもって降板する(ウェブ番組でこういう言い方が正しいのかどうかわかりませんが)ことになりました。番組では「休止」とありますが、レギュラーとしては復帰の可能性が薄いので主観的な表現として「降板」とさせてください。 津田さんとは、私がSNS上で氏のある言葉を批判したことをきっかけに「ポリタスTV」のゲストとしてお呼びいただき、その後レギュラーのコメンテーターとして出演しないかというお声がけをいただきました。私の異議申し立てに対しても常に聞く耳を持ち、たとえばジェンダーやマイノリティ […]
2021年度の仕事と2022年度の研究
休職期間もあり、あまり研究者らしい仕事はできなかった年度でした。論文としては以下のようなものが公刊されました。新しい仕事がうまく既存の研究領域にのせられず、査読論文の刊行ができなかったのが残念です(6月にようやく刊行予定で、ほっとしています)。 富永京子,2022,「方法としての社会運動論――佐藤健二の「社会運動研究における「大衆運動」モデル再検討の射程」から」出口剛司・武田俊輔編『社会の解読力<文化編>』新曜社.富永京子,2022, 「社会学の社会運動論──隣接領域との関連から」『新社会学研究』5号. 学会報告としても国際会議(AFPP Conference, EAJS Conference […]
2021年と3ヶ月の休職のこと
2021年11月から2022年2月まで,体調といいますか一身上の都合により休職しています。毎年なんとなくのまとめの記事を年末年始に書いていますが,私にとってこの休職のインパクトはとても大きなものでした。 はっきり言って,「何もしない」ということがこれほど苦痛だとは思わず,自分がいかに「何かする」ことに対して強い呪いをかけていたか,かけられていたかということは、ずいぶん痛切に感じるところでした。 休職して,入院の事前準備,事後療養も含めて三ヶ月間を休職しているわけですが,現時点で,休職中何をしていたかというと,やっぱり仕事していたと言うしかないと思います。これは別に職場や他の仕事先に理解がない […]