『みんなの「わがまま」入門』について:政治的じゃないのに政治的な本

 『読むことの歓び 第15回読書感想文コンクール 優秀論文集(明治大学文学部編)という本をお送りいただきました。『みんなの「わがまま」入門』(左右社)が課題書として取り上げられたということで、読書感想文が掲載されています。  『みんなの「わがまま」入門』については、刊行からそろそろ5年くらい経つのですが、徐々にではありますが版を重ねており、現在もご取材やご紹介をいただきます。実はこの本については、100超のメディアでご紹介いただいたにもかかわらず、自分としてはあまり言及したくなかったので積極的にその後の動向を書いてこなかった経緯があります。この春には新しい本も出ますし、もう書いても良いかなと思 […]

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社会運動「論」と社会運動「研究」(2)

 前回(社会運動「論」と社会運動「研究」(1))のつづきです。  サンディエゴからマンチェスターに移動して、社会運動研究の国際会議AFPP Conferenceでは”Prefiguration performed by ‘pretend’ squatting: The case of the self-build community engaged by activists”という報告をしました。社会運動従事者の自力建設を通じたライフスタイル型の活動を分析した研究プロジェクトの一部です。  先週参加したMobilization Conferenceに比べると、こちらはオフィシャルな […]

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社会運動「論」と社会運動「研究」(1)

 6月8日から15日にかけて、Mobilization Conference (San Diego State University)とAFPP Conference(The University of Manchester)という二つの社会運動研究者が集まる国際会議で報告してきました。もともと双方とも継続的に参加している会議なのですが、久々の対面参加でテンションが上がっているということもあり、双方への参加を通じて考えたことを少しメモに残しておこうと思います。  Mobilization Conferenceは、社会運動論の国際誌Mobilizationが主催する国際会議です。例年二日間で50 […]

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人の手を借りることはこんなにも難しいのかと思う一年(2022年度まとめ)

 あっという間の2022年度でした。個人で論文や研究発表を頑張るというよりは、スタッフや院生、研究員の方々との連携を重視した年でした。そもそも社会科学系の、しかも質問紙調査や実験、海外でのフィールドワークなどを行うわけではない質的研究者なのに、なんでそれほどチームでやることを頑張ろうと思ったかというと、自分ですべてやることはもう難しいだろうということと、今後の生活の仕方を考えると「誰かに頼る」ことを前提として生活や仕事を捉え直さなくてはいけないだろうと思ったからです。  そういうわけなので、昨年度はとにかく人に頼った一年で、頼りすぎて人と自分の境目が曖昧になるくらいでした。  なぜ人に頼る必要 […]

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インターネット番組「ポリタスTV」の出演休止/降板について

 2021年4月から隔週で、津田大介さんが務めるインターネット報道番組「ポリタスTV」に隔週で出演したのですが、8月をもって降板する(ウェブ番組でこういう言い方が正しいのかどうかわかりませんが)ことになりました。番組では「休止」とありますが、レギュラーとしては復帰の可能性が薄いので主観的な表現として「降板」とさせてください。  津田さんとは、私がSNS上で氏のある言葉を批判したことをきっかけに「ポリタスTV」のゲストとしてお呼びいただき、その後レギュラーのコメンテーターとして出演しないかというお声がけをいただきました。私の異議申し立てに対しても常に聞く耳を持ち、たとえばジェンダーやマイノリティ […]

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2021年度の仕事と2022年度の研究

休職期間もあり、あまり研究者らしい仕事はできなかった年度でした。論文としては以下のようなものが公刊されました。新しい仕事がうまく既存の研究領域にのせられず、査読論文の刊行ができなかったのが残念です(6月にようやく刊行予定で、ほっとしています)。 富永京子,2022,「方法としての社会運動論――佐藤健二の「社会運動研究における「大衆運動」モデル再検討の射程」から」出口剛司・武田俊輔編『社会の解読力<文化編>』新曜社.富永京子,2022, 「社会学の社会運動論──隣接領域との関連から」『新社会学研究』5号. 学会報告としても国際会議(AFPP Conference, EAJS Conference […]

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2021年と3ヶ月の休職のこと

 2021年11月から2022年2月まで,体調といいますか一身上の都合により休職しています。毎年なんとなくのまとめの記事を年末年始に書いていますが,私にとってこの休職のインパクトはとても大きなものでした。 はっきり言って,「何もしない」ということがこれほど苦痛だとは思わず,自分がいかに「何かする」ことに対して強い呪いをかけていたか,かけられていたかということは、ずいぶん痛切に感じるところでした。 休職して,入院の事前準備,事後療養も含めて三ヶ月間を休職しているわけですが,現時点で,休職中何をしていたかというと,やっぱり仕事していたと言うしかないと思います。これは別に職場や他の仕事先に理解がない […]

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2021年度大学院ゼミ(いまのところオンライン)

 2021年度大学院ゼミ(富永)は2020年度に引き続きジャーナルクラブ形式で行う予定です。いまのところ、ポスドク〜M1の方が10名弱くらい参加されてます。 英語査読付ジャーナルへの投稿を中心とする参加者の今後の研究活動のために、以下のような内容で行っていきます。☆ジャーナルクラブの日本語での説明は、九州大学岡本剛先生のサイト(https://www.artsci.kyushu-u.ac.jp/~okamoto/lab-jc.html )などが勉強になりました!  基本的には「自分の(そして他の参加者の)研究に関連する論文・および論文誌・学問分野における最新潮流」の紹介を行う、というのが目的と […]

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定例オンライン読書会・最近の社会運動に関する単著も共著もとりあえず読む・2021年

 2020年に引き続き、ペースは落ちますが読書会を開催する予定です。Zoomでやったのが予想外によかったので、今後もZoomでやっていく予定です。 ・目的 社会運動論の最新動向を日本語で知るという目的ですが、実際の活動に携わられている方、実践対象としてであれ研究対象としてであれ社会運動が気になるという方と、「勉強」から入る社会運動、みたいなことをやってみたいなと思っています。いずれにせよ、みんなでワイワイ本を読むといつも楽しいから今回もやろうというところです。 ・開催日・開催時間・開催期間 昨年は参加者同士で予定を合わせてやりました。夜開催が多かったです。 参加希望の方は、nomikaishi […]

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「いじめられたから見返そうと頑張る」には無理がある(Interfaceに論文掲載)

 社会運動の専門誌Interfaceに論文が掲載されました(こちらから読めます)。国際誌への掲載としては、2017年に刊行された前回の論文から随分時間が経ってしまいました。内容は「社会運動の旅(Protest Journey)」に関するものですが、ここでは今回の論文の執筆に至るまでの少し別の話をさせてください。  この3年間はある事情で研究が難しい状況にありました。この論文もいくつかの雑誌に投稿を繰り返してようやく掲載されたというところです。理由は後述しますが、いままでお世話になってきた「日本の社会運動論の先生に認められるため」に頑張ってきたのですが、もう限界があるような気がします。この論文が […]

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